水道水と地下水の違い
まず知っておきたいのが水道水と井戸水の違い。水道水とは、河川や湖、池を水源とする水を浄水場に送り、薬品や塩素によって不純物を取り除いたり消毒したりして飲料水にしたものです。地下水は、長い年月をかけて地層を通過し自然にろ過された水。岩の割れ目から出てくる湧き水や温泉も地下水の一種です。薬品などを使用していない自然の水であり、ミネラル成分が豊富に含まれているため「ナチュラルミネラルウォーター」とも呼ばれています。井戸など地下水を汲み上げるために初期投資は必要ですが、地下水はいくら使っても無料。水道料金のコスト削減に効果的です。
飲み水や生活用水に広く活用される地下水
飲み水としても利用できる深井戸水は、水道水の代わりとしてそのまま活用することが可能。最近では、お米が美味しく炊ける、珈琲が香り高く淹れられるといった美味しさの面から地下水にこだわる人もいます。周辺環境の影響を比較的受けやすい浅井戸水は、飲み水以外の生活用水として広く活用されています。庭や畑に井戸を設置すれば、畑や花壇の水撒き、洗車にも惜しまず思いっきり使うことができます。夏場の子どもの水遊びやペットの足を洗うなど活用法はさまざま。地下水を自宅の中まで引けば、お風呂場やトイレの水を節約できます。
工業や農業などあらゆる現場で欠かせない存在
地下水は、生活用水のほかに工場用水や農業用水としても活用されています。特に化学、鉄鋼、パルプ・紙・紙加工品などの製造業など水を大量に使用する工場や作物の栽培に大量の水を使う農家では、コストダウンのために地下水の利用が不可欠。また、養魚用水、都市蓄熱(ヒートポンプ、ヒートパイプなど)、公園の噴水、環境用水など用途は多様。
病院や福祉施設、フィットネスジムなど大量に水を使う施設でも水道代節約のため地下水を活用している場合が多あります。
井戸の設置で災害時の水源確保に備える
震災や台風などの災害時において必要不可欠な水。断水で水道が出なくなってしまった場合でも井戸があれば水を確保することができます。ただし、水の汲み上げにモーターを使用している井戸の場合、電気がストップした場合に備えて手押しポンプの設置が必須。水中ポンプと手押しポンプ両方の役割を備えたタンデム式のポンプもあります。手押しポンプがあれば、必要なときにいつでも水を汲むことができるので安心です。
また、災害時は飲料水や生活用水が優先されるため、工業用水の断水が長期化することも。阪神大震災や東日本大震災においても工業用水の断水が続き、工場の稼働がストップしたため産業に大きな影響を与えました。災害時や断水時に長期間の休業を余儀なくされるのは、工場ばかりではありません。デパートや空港、ホテルや旅館、飲食店やコンビニエンスストア、個人商店なども同様。井戸によって水を確保できれば、災害時でも営業活動を維持できます。
病院や保育所、災害時の避難所として使用される学校などの公共施設でも、災害時の緊急水源として、井戸は今後欠かせない存在になりそうです。