このサイトのタイトルにもなっている「防災井戸」ですが、ずばり「防災井戸」ってなんだろう
地震などの災害で水道が止まってしまったときでも、安心して水を確保するための井戸。多くの方はこんなふうに考えるのではないでしょうか。
では、普通の井戸と防災井戸は何が違うのでしょう?
水道ではなく地下水を利用するのだから、災害やライフラインの寸断に関係なく使える。そう思ってしまうかもしれませんが、井戸ならいつでも気兼ねなく使えると思ったら大間違い。防災井戸として活用するためには、それなりの準備が必要なのです。
便利で見た目もスッキリ 現代版の井戸
一般的な井戸とは、“地下の帯水層から地下水を汲み上げるために掘削した採水施設”を指します。
ホラー映画や怪談話に登場する暗くて深くてま~るいアレや『となりのトトロ』でメイちゃんとサツキちゃんが洗濯をするときに使っていたアレ。古き良き日本のイメージはありますが、「なんとなく気味が悪い」「子どもや高齢者にとって危険なのでは」と考えてしまうかもしれません。もちろん、昔ながらの井戸が現在も活用されているシーンは多くありますが、新たに設置する井戸は「暗くて深いアレ」とは全く違います。
高いボーリング技術によって、井戸の穴の直径は10㎝程度。穴にパイプを通し、電動ポンプを使って水を汲み上げるので、水道と同じように蛇口をひねれば水が出るという仕組みになっています。地上で私たちが目にするのは、単なる蛇口に過ぎません。危険でも怖くもなく、水道と同じように使える。でも、畑や花壇の水やり、車の掃除、子どもの水遊びなど、水道代を気にせず思う存分水を使えて、いざという時に役に立つ。それが現代版の井戸です。
災害時でも安心して使える防災井戸にするために
では、防災井戸とはいったい何をもってして防災井戸と呼べるのでしょうか? もうすでにお気づきの方もいるかもしれません。現代の井戸の唯一の弱点ともいえるのが、「電動ポンプ」を使っていること。井戸は地面対して垂直に伸びているため、地震の影響を受けにくいとされています。しかし、電力の供給が止まってしまえば、水を汲み上げることができません。たとえ、パッと見はいつもと変わらない状態でも、停電によって井戸が使えなくなってしまうのです。
防災井戸に欠かせないのが「タンデム式手押しポンプ」。電動ポンプと手押しポンプを併設できるもので、状況によってそれぞれを切り替えて使えます。ハイテクとローテクのハイブリッド、といったところでしょうか。手押しポンプ自体の性能も向上しているので、高齢者や子どもでも簡単に水を汲み上げることができるので安心です。既存の井戸に取り付けることも可能なので、改めて防災井戸を掘る必要はなく、自宅の井戸を活用できます。
水の確保は命に直結する重大な課題です!
普段は当たり前にある水ですが、トイレやお風呂、洗濯などの生活用水として私たちは1人当たり1日186リットル以上使っているとも言われています。これってすごい量です。
大規模な災害の発生によりライフラインが寸断され、深刻な水不足に陥る地域も少なくありません。阪神・淡路大震災や東日本大震災のときも生活用水が不足し、トイレに行くのを我慢するために水を飲まない人が多くいたそうです。脱水症状はエコノミー症候群や心筋梗塞などにもつながるため、水の確保は命に直結する重大な課題。1923年に関東大震災が発生した際は、多くの一般家庭に井戸があったため大規模な水不足は発生しなかったそう。
自治体・企業・施設などでも防災井戸への関心が高まっています
そんななか、一般家庭だけでなく、多くの自治体や企業、施設などで防災井戸への関心が高まっています。マンションや団地に共同の防災井戸を設置したり、スーパーや銀行が地域貢献の一環として設置したり。地域防災力の強化が評価されている東京都荒川区では、小学校や公園に防災井戸を積極的に設置し、現在その数は30ヶ所を超えています。防災井戸はある程度の初期投資が必要になるので、自治体が前向きに取り組んでくれるのはかなりうらやましい!とはいえ、自分や家族の身を守るために、まずは「井戸」や「防災井戸」についていま一度考えてみる必要がありそうです!